「もっとお金があれば、株の配当金だけで働かずに貴族のような優雅な暮らしができるのに・・・」と一度は考えた投資家の方は多いと思います。

そんな投資家の心を突くのが金融業界であり、「配当貴族指数」という高配当銘柄でできた指数が日本でここ数年少しずつ話題となり、それに連動するインデックスファンドが出てきています。

(「配当貴族」ネーミングもすごいですね。英語名もそのまま “Dividend Aristocrats” ですから直訳です。)

今回はそんな配当貴族ファンドが日本の投信会社も作り始めて1-2年となったので、そろそろパフォーマンスがどんなものか調べてみました。

配当貴族指数とは?

配当貴族指数は、米国のS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが作成しており、主要な株価指数の構成銘柄のうち、10年以上にわたり毎年増配をしているか、または安定して配当を行っている最も配当利回りの高い企業のパフォーマンスを測定するように設計されています。

主要な株価指数というのは「S&P/JPX 配当貴族指数」であればTOPIX、「S&P 500配当貴族指数」であればS&P500といった感じで国別にいくつかあります。

配当貴族指数は、高い配当利回りと、配当の持続可能性・成長性の間のバランスを保つことを目指しており、配当性向と直近の最大配当利回りに関する基準を設定しており、将来的に配当性向を維持できない可能性のある企業を除外しています。

配当貴族指数の構成銘柄は、高配当企業を中心にポートフォリオを構成するために、直近の配当利回りに基づいて各銘柄を加重しており、毎年 1 回 7 月にリバランスされます。

具体的な銘柄選定は日本株版の「S&P/JPX 配当貴族指数」の場合、TOPIX構成銘柄のうち、10年以上にわたり毎年増配をしているか、または安定して配当を行っている銘柄の中から直近 12 ヶ月の配当利回りが最も高い上位 50 銘柄が選択され、特定の業種のウェイトが30%を超えない範囲で、配当利回りに加重された配分をするようです。

具体的にはどんな銘柄が配当貴族?

日本株の「S&P/JPX 配当貴族指数」に連動する投資信託「SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン」の構成銘柄を見てみましょう。

なるほど、無難で優良そうな銘柄が揃ってますね。

規制で斜陽になりそうなパチンコの平和とSANKYO、アパートのサブリース商法でやばそうな大東建託、Amazonにやられそうな家電量販業界のケーズHD、マイナス金利で死にそうな銀行株を除けば、なかなか良い感じですね。

SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン」の信託報酬0.4536%が嫌で資金力があるなら、個別株で揃えても良さそうな感じがします。

2018年4月27日時点の配当利回りは2.19%で、同日のTOPIX予想配当利回り1.78%を0.41%上回る程度で思ったより高配当ではないんだなという感じがします。

配当貴族ファンドのパフォーマンスは?

配当貴族指数はなにやら良い感じがして、指数のパフィーマンスも良さそうに感じます。しかしながら、実際にファンドとして運用するとなると、他のシンプルなインデックスと比べてちょいと手が込んでいるのでうまくいくとは限りません。

そのため、指数ではなく、実際に運用している日米の配当貴族ファンドを比較したいと思います。

日本株の配当貴族の場合

日本株の「S&P/JPX 配当貴族指数」に連動する投資信託「SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン」とTOPIX格安手数料投信の「ニッセイ TOPIXインデックスF(信託報酬0.17%)」を比べてみましょう。

両方とも分配金なしで再投資するタイプの投信で1年比較です。

トランプ相場で株価が右肩上がりだったときはTOPIX投信の方がパフォーマンスが良いですが、2018年2月からの下げ相場で差が縮まって、2018年6月時点ではたいして変わらない感じです。

これは、良い悪いではなく、単純に「配当貴族」はTOPIXよりもリスクが低いということだと思います。

「配当利回りが良い=割安でパフォーマンスが良い」という仮説は間違いで、全体的に値動きが少なめで安定したポートフォリオになっているだけと言えます。

1年でのリスクに対するリターン比であるシャープレシオを比較すると、

SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン」は1.71
ニッセイ TOPIXインデックスF」は1.44

ですので、日本株の「配当貴族」ファンドは、TOPIXより低リスクの割にそこそこのパフォーマンスということになります。

米国株の配当貴族の場合

さて、配当貴族と言えばコカ・コーラやマクドナルドのような超安定配当を叩き出す米国株のイメージが強く、近年の米国配当株ブームで、個別にわざわざ米国株を買い付ける人もいるくらいです。

では米国株の配当貴族はどんなパフォーマンスなのでしょうか。

S&P 500配当貴族指数」に連動する「野村インデックスF・米国株式配当貴族」とS&P500に連動する格安手数料投信「iFree S&P500インデックス」を比較してみましょう。

両方とも分配金なしで再投資するタイプの投信で、設定されてから日が浅いので6か月で比較です。

配当貴族はS&P500を下回り、どんどん差を広げられています。

米国株の場合、配当貴族は非常にパフォーマンスが悪く、これは期間を長くして米国のファンド「バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)」と「SPDR S&P 500 ETF(SPY)」を10年分で比較しても同様で、配当貴族は大負けする結果になりますし、リーマンショックのような下落相場でも強くないです。

その理由は簡単な話で、アルファベット(Google)やAmazonに代表される無配当の高成長株がS&P500には含まれ、配当貴族には含まれていないからです。

日本株と米国株でなぜ「配当貴族」のパフォーマンスは異なるのか?

日本株の配当貴族はTOPIXに比べて低リスクでなかなかのパフォーマンスなのに対し、米国株の配当貴族はS&P500に比べてボロボロでした。

その原因は、日本の経営者の実力不足と、それゆえに成長産業がないからです。

米国の場合は、前述したように無配当の高成長ハイテク株が大成長して相場をけん引し、「配当に回すくらいなら成長投資として勢いのあるベンチャーへのM&Aや設備投資にガンガンつぎ込め」といった感じで、配当が多い企業は成長余地の限られる企業です。

日本の場合は、成長著しいハイテクでは初期段階での投資の遅れ(スピード感のなさ)から完全に敗北し、M&Aをするにしても成長見込みのない企業を外資系証券の口車に乗せられて高値掴みして失敗するなど、「勘違いした成長投資をするくらいなら配当に回した方がマシ」という感じで、経営者の投資能力が低すぎるのです。

本来であれば、成長株投資よりもパフォーマンスが悪いはずの配当貴族投資なのですが、日本では経営者の問題でこれが当てはまらないようです。

まとめと感想

高配当利回り株に投資する配当貴族投資では、米国株ではダメで日本株だと低リスクでまぁまぁということがわかりました。

また、配当貴族投資は一部で、指数で机上計算したパフォーマンスを載せて「TOPIXやS&P500より優れている」という触れ込みを使っているところがあるのですが、実際の投信の運用データを見るとそこまでパフォーマンスは良くないことがわかります。

ただ、これは成長産業のあるなしが大きく、今後成長余地の乏しい世界になった場合、配当貴族投資は非常に有効になるかもしれませんので、状況を読んで投資していくことが大事だと思います。

 

今回多く取り上げた投信「SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン」は運用開始から2年弱ですのでデータ不足感はありますが、これからも少し期待して見守っていきたいと思います。

ただ、高配当株の楽しみである年2回の配当は、全額基準価額に組み込まれて分配金なしの「SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン」では合理的ではあるけれども、面白みがないと思います。

また、配当所得を所得税は総合課税・住民税は申告不要にすることで、低所得の配当生活者だと税率が20%よりも大きく下げられるという技があるため、配当生活を狙う人は「SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン」ではなく、配当貴族の構成株を個別に買った方が合理的であるとも考えられます。

結局、配当貴族をどう扱うかというのは、状況に合わせてケースバイケースで人や状況によって答えは変わるということですね、

それでは!