成り上がりの切り札とも、破滅への輪舞曲(ロンド)ともなりうるハイリスク投資、それが「VIXショート投資」です。

VIXショート投資は、VIX先物を売るか、VIX先物投資ファンドを空売りするか、そのインバース系ファンドを買うことで行います。

ただ、日本市場では「2049 VIXインバースETN」が早期償還により消滅し、「1552 国際のETF VIX短期先物指数」が新規信用売り禁止となっている事が多く、証券口座でのVIXショート投資はかなり難しくなってしまいました。

そこで残るのは、GMOクリック証券のCFD取引です。

具体的にはGMOクリック証券のCFDで以下の取引をすることでVIXショート投資ができます。

  • 米国VI の売り
  • 米国VIブル2倍ETF(UVXY) の売り
  • 米国VIベア1倍ETF(SVXY) の買い

※CFD取引は、FXや先物・オプションと同じ区分で損益通算できますが、株・債券・投資信託・ETF等の現物系の資産とは損益通算できないので注意です。

では、これらは一体どんな投資なのでしょうか?
かなり複雑なので、まずはVIXから解説していきます。

VIXとは?

VIXとはVolatility IndeXの略で「恐怖指数」とも呼ばれます。
一般的に言うVIXは、アメリカの代表的な株価指数「S&P500指数」のヨーロピアンオプション価格から逆算されます。
S&P500オプション価格が割高で取引されるとVIXは高くなり、割安で取引されるとVIXは低くなります。

ではオプションとは何か?というと、主要なオプションである「ヨーロピアンプットオプション」の場合、“株価保険”に例えると分かりやすく、「保険料50ドルいただければ、満期日に株価が権利行使価格2500ドルより安くなった場合、それより安くなった分は私が全額補填しましょう!」という商品です。

この“株価保険”の保険料がオプション価格です。
「株価が急落しそうだ!資産を保護するために多少割高でも“株価保険”(オプション)が欲しい!」という人が増えるとオプション価格が上がり、VIXも上がります。
そう、株価下落の恐怖で“株価保険”にすがりつく度合をVIXは表すので「恐怖指数」と呼ばれるのです。

反対に「株価は安定しそうで保険金支払いもなさそうだから、“株価保険”(オプション)を他の人に売って保険料収入を得よう!」というオプション売りが優勢になるとオプション価格が下がり、VIXも下がります。

VIXは平時は10~20の間で推移しており、20を超えると悲観状態と言われます。
VIXの史上最高値は、リーマンショックから1か月以上経過した2008/10/24の89.53です。
この時は、破綻したリーマンだけでなく「保険大手のAIGも吹っ飛ぶぞー!」といった連鎖大型破たんの恐怖がありまして、こんな数字になったと思われます。

過去の主要な高値

  • 1990年8月23日 イラク軍クウェート侵攻…36.47
  • 1997年10月28日 アジア通貨危機…48.64
  • 1998年10月8日  ロシアデフォルト(LTCM破綻)…49.53
  • 2001年9月21日 アメリカ同時多発テロ…49.35
  • 2002年7月24日 エンロン不正会計事件…48.46
  • 2002年8月5日  ワールドコム破綻…45.21
  • 2003年3月12日 イラク戦争勃発…34.40
  • 2008年9月18日 リーマン・ブラザーズ破綻…42.16
  • 2008年10月24日 世界金融危機…89.53(史上最高値)
  • 2010年5月21日 ギリシャを筆頭とするPIIGSの国債懸念…48.20
  • 2011年8月9日 S&Pが米国債を格下げ…47.56
  • 2011年10月4日 ギリシャ国債のデフォルト危機…46.88
  • 2015年8月24日 中国経済失速懸念…53.29
  • 2018年2月6日 米雇用統計での賃金上昇をきっかけとした長期金利上昇、VIXショック「変動幅は過去最大規模」…50.3

過去の主要な低値

  • 1993年12月27日… 8.89
  • 2006年11月22日 …9.81
  • 2007年1月24日 … 9.87
  • 2014年7月 3日 …10.28
  • 2017年7月26日 …8.84
  • 2017年11月3日 …8.99
  • 2017年11月24日 …8.56(史上最低値)
  • 2018年1月4日 …8.92

VIX算出の補足

ヨーロピアンオプションの価格は、以下の要素をブラックショールズ方程式の解析解に代入して計算されます。

①原資産価格(S&P500指数の現在価格)
②権利行使価格
③無リスク金利
④満期までの残存期間
⑤ボラティリティ

上記5つのうち、①~④と計算結果であるオプション価格は相場で取引されてる数字がありますので、これらをブラックショールズの方程式の解析解の式に代入して、唯一観測できない「⑤ボラティリティ」を逆算します。このように計算されたボラティリティはインプライドボラティリティと呼ばれ、これがVIXの算出に使われます。
(ボラティリティには、他にも過去の原資産の変動実績から計算するヒストリカルボラティリティもあります)

ブラックショールズの仮定では、株価はブラウン運動に従い、その変動率は正規分布に従うとしており、正規分布のパラメータσである標準偏差σがボラティリティの理論上の立ち位置です。
実際の株価は、ブラウン運動という自然界のランダムウォークには従わないことがわかっており、実はモデルのズレの部分を全てインプライドボラティリティが背負いこみます。
そのため、危機発生時ほど株価はブラウン運動とは乖離した動きをするため、極端にVIXが跳ね上がる結果となります。

VIX先物とは?

VIX指数の先物取引です。満期日にいくらでVIXを買う・売るといった取り決めをする取引で毎月満期があります。
シカゴオプション取引所(CBOE)に上場し、取引されています。

VIX先物には債券のイールドカーブと同じようにVIX先物も期間構造がみられます。
2017/5/12現在のVIXの期間構造を見てみましょう。
今はかなりVIXが低く落ち込んでいる状態です。

長い満期のVIX先物の値は、株価暴落による急上昇(ジャンプ)を確率的に織り込みつつ短期の値動きにはあまりつられないため、15-20に収束します。
そのため、現在はVIX現物の値が低いので右肩上がりですが、VIX現物が40などに急上昇した場合は右肩下がりのグラフになります。

余談ですが、このような長期平均への回帰がある原資産には、金利の期間構造モデル(VasicekやCIRなど)でモデリングするとフィットしそうです。
今度、期間構造モデルを使ったフィッティングと投資戦略も研究してみたいと思います。

VIX先物投資ファンドとは?

VIX先物指数に連動するファンドです。ただ単にVIX先物を買い持ちしているだけではありません。
VIX先物の満期までの期間は、毎日1日ずつ減っていき、満期が到来すると清算されてポジションが消えてしまいます。
そこでVIX先物に投資するファンドは、常に加重平均した満期までの期間が一定になるように毎営業日、期近のVIX先物を売却し、期先のVIX先物を購入するロールオーバーをします。この取引手法をコンスタントマチュリティ(CM)と言います。

このロールオーバーがVIX先物投資ファンドの肝です。
VIX短期先物ファンドですと、5月12日現在の場合、毎日少しずつVIX5月物を売って、VIX6月物を買い直しして、加重平均した期間が1か月になるように調整します。
2017/5/12の値を使うと、VIX5月物を11.225で売って、VIX6月物を12.425で買い直すので、このような取引を1か月続けると10%以上ファンド価格は減価します。

このような状態をコンタンゴ、逆に期近より期先の方が安い状態をバックワーデーションと言います。
VIX先物は他の先物と比べて、コンタンゴが激しくなる傾向があり、それがVIXショート投資の収益の大きな源泉の一つとなるのです。

VIXショート投資とは?

VIX先物を空売りする、もしくはVIX先物投資ファンドを空売りする投資もしくは、VIX先物投資ファンドと逆の値動きをするVIX先物インバースファンドを購入する投資です。

VIXショート投資の特徴としては、VIXが下がれば儲かるのはもちろん、VIXがコンタンゴのまま動かなくても儲かります。
VIXが上がらなければ負けないですし、上がっても放っておけば元の水準に回帰するのでやはり負けにくいです。

ただし、負ける時(危機発生時)は退場レベルのひどい負け方をする可能性があります。

 

GMOクリック証券のCFDでのVIX関連銘柄

実際のVIXショート投資は、GMOクリック証券のCFDで以下の3銘柄を取引をすることで行います。

  • 米国VI の売り
  • 米国VIブル2倍ETF(UVXY) の売り
  • 米国VIベア1倍ETF(SVXY) の買い

これらのVIX関連銘柄の紹介をしていきます。

米国VI

これは、シカゴオプション取引所(CBOE)のVIX先物の期近物の価格と連動している銘柄のようです。

商品性としては、残存期間が1週間に迫った第2水曜日に翌限月の先物にロールオーバーし、差額分が価格調整額として発生するようです。

例えば、2018/01/10にVIX先物1月物(1/17が満期)からVIX先物2月物へのロールオーバーがあり、1月物が10.58、2月物が11.58でしたので、ちょうど1ドル×111.42円/ドル=1,114円の調整金が発生しました。その際、買いポジションの人は1単位当たり1,114円払い、売りの人は1,114円受け取りますが、米国VIの値が10.58から11.58に切り替わったので、ロールオーバー時点の損益はいずれもプラスマイナスゼロとなりますね。

特徴としては残存期間が月内で1週間~5週間とばらつくので、ロールオーバーしたばかりで残存期間が長い時は相対的にリスクが低め(急変するVIX現物より長期平均水準にやや近くなる)ですが、残存期間が短くなると価格変動リスクが相対的に高く、VIX現物の動きに近くなるというリスクが不安定な商品となります。

そのため、VIXショート投資で売りポジションを建てると、残存期間が短い時に急上昇するとほとんどVIX現物に近いダメージを受けます。投資額の最大5倍ダメージは覚悟したいところです。

取引時間が長く、日本時間の朝8時から翌朝6時まで平日22時間取引できるのも良いところですね。

それでは、月次チャートを見てみましょう。

毎月ロールオーバーされるので一定の水準を保っています。VIXショート投資の利益の主な源泉となるコンタンゴ時の時間的価値の消失による利益は、毎月のロールオーバー時に価格調整額としてもらえる(バックワーデーションの時はとられる)ので、機動的なポジション調整が必要ないので、他の2つのETFよりもリバランスが楽です。

コンスタントマチュリティではないのでリスクが不安定なことを除けば、なかなか良い商品です。また、他ETFに特有のレバレッジ減価などもないので、VIXが低い時のロング戦略をしたいときにも最適な商品と言えるでしょう。

米国VIブル2倍ETF(UVXY)

こちらは、VIX先物の買いポジションを2倍のレバレッジをかけて、コンスタントマチュリティー戦略(加重平均した残存期間が30日になるように、期近物とその翌月物を毎日ロールオーバーすること)で運用するETFです。

VIXはただでさえ値動き激しいのにレバレッジ賭けるなんて頭おかしいですね。
(CFDだとさらにレバレッジ賭けられるわけですが)

特徴としては、VIXが低い局面だとコンタンゴ減価にレバレッジ減価も合わさって、ぐんぐん値下がりします。

反面、売りポジションを建てている時に、VIXが急騰するとかなりエキサイティングなダメージを受けるでしょう。投資額の最大6倍ダメージは覚悟したいところです。

ロスカっとされないように安全運転でVIXショートをするなら証拠金の15%くらいでしょうか。

また、取引時間は平日のNY時間に限られ、日本時間の23時半から翌朝6時まで(サマータイムなどで変わる)ですね。

ただ、問題があって、日本の「1552 国際のVIX短期先物ETF」と同様に、新規売り規制がかかっていることが多いのでVIXショート投資になかなか使えないのです。

月次チャートを見てみましょう。天文学的な下げっぷりですね。

投資方法としてはVIXが下がったりコンタンゴで価格が下がってポジションが小さくなったら、適宜売り増しする必要があり、逆にVIXが急騰して含み損になったら元の水準に戻るまで耐えるというストップ&ゴー的な戦略になるでしょうか。

基本データ
ETF銘柄名称(日本語) プロシェアーズ・ウルトラ・VIX短期先物ETF
ティッカーコード UVXY
上場市場 NYSE ARCA
連動指標名称(英語) S&P 500 VIX Short-Term Futures ER
基準価額(USD) 15.97 (2018/02/15)
純資産総額(百万USD) 347.1 (2018/01/31)
資産クラス 株式
投資地域 アメリカ
設定日 2011/10/03
設定国 米国

米国VIベア1倍ETF(SVXY)

こちらは、VIX先物の売りポジションを、コンスタントマチュリティー戦略(加重平均した残存期間が30日になるように、期近物とその翌月物を毎日ロールオーバーすること)で運用するETFです。

かつて日本のETN市場で強制償還された「2049 VIXインバースETN」と商品性は同じですね。

※参考記事「強制償還される「2049 VIXベアETN」の償還価格は妥当?抗議の最後の大勝負!(2018/2/7)」

VIXショート投資の際には、この銘柄の買いポジションでよく、最大ダメージは投資金額の全額ですね。他の米国VIや米国VIブル2倍ETFのように、派手な投資金額上の含み損ダメージに耐えるのではなく、VIXが急騰したら適宜買い増ししていくことで挽回する感じですね。

月次チャートを見てみましょう。かなり激しい動きですね。

VIXが低く安定してコンタンゴの時はぐんぐん上がり、ショックでVIXが急騰すると急落します。

投資方法としては常に一定のポジションになるように上がったら買いの枚数を減らして、下がったら買いの枚数を増やすのリバランスを行います。急落して水準が大きく削られても余力で損失金額分だけ(枚数は大きく増える)再投資すればよいのです。

ただ、上場廃止になるリスクがあるので、なんとも言い難いクセのある商品とも言えますね。買いには規制がかからないところは素晴らしいとは思うのですが・・・。

基本データ
ETF銘柄名称(日本語) プロシェアーズ・ショートVIX短期先物ETF
ティッカーコード SVXY
上場市場 NYSE ARCA
連動指標名称(英語) S&P 500 VIX Short-Term Futures ER
基準価額(USD) 12.83 (2018/02/15)
純資産総額(百万USD) 1,613.4 (2018/01/31)
資産クラス 株式
投資地域 アメリカ
設定日 2011/10/03
設定国 米国

 

VIXショート投資をどう行うべきか?

過去のVIXの動きから、景気のサイクルにおけるVIXショート投資を使う局面としては、景気が拡大し、VIXが安定時に15を下回るときです。
そんな状況で、些細なネタでVIXが高くなった時がショートのタイミングです。

危機が発生してVIXが急上昇したタイミングでショートした方が儲かりそうですが、リーマンショックのように破たん直後は大したことなく、あとからあれよあれよと連鎖破たんの恐れが出てVIXが80を超えてしまい、「こんなに深刻になるとは!」となった場合、迂闊に手を出すと破産します。
噴火した火山に飛び込むと死ぬのです(落ちるナイフを掴むの逆イメージ)。

また、危機発生後の景気が不安定な局面では、VIXが高止まりし、コンタンゴの恩恵を得にくいこともあるため、VIXショートよりも日経平均やS&P500等の株価指数に連動するインデックスファンドを買うのが正解です。
十分に景気と株価が回復して、株価指数連動インデックスファンドの利益収穫が終わってから、十分な余力をもって始めるべきなのが、VIXショート投資なのです。

危機発生時:現金・VIXが過度に高い時だけVIXショート
景気最悪局面:株価指数連動インデックスの買い
景気回復局面:株価指数連動インデックスの買い(継続)
景気拡大局面:VIXショート

また、VIXショート投資中に、金融危機が発生した場合は全力撤退が絶対です。
一方、VIXはS&P500の株価保険の保険料から計算されるので、アメリカの株価への直接の影響が限定的な他国の政治リスク・地政学的リスクは立ち向かっても良さそうです。
(ちょうど、2017年4月のフランス大統領選&北朝鮮問題の時は立ち向かって正解でした)

また、ポジションも注意が必要で、CFDは証拠金の5倍(500%)の取引ができますが、安全に行くなら、平常時は以下のレベルに抑えた方が良いでしょう。

  • 米国VI の売り・・・証拠金の20%まで
  • 米国VIブル2倍ETF(UVXY) の売り・・・証拠金の15%まで
  • 米国VIベア1倍ETF(SVXY) の買い・・・証拠金の30%まで

上記の割合は、ロスカットレートを極限まで上げて、VIX暴騰時でも耐えきることが前提ですが、ロスカットレートを近めにして急騰時は一旦逃げて高くなったところを叩くというのもアリだと思います。特に米国VIは取引時間が長いので急騰時にうまくロスカットできる可能性があります。

ただ、再エントリーのタイミングが難しく、主に相場が動くのがNY時間中なので、張り付いたら寝不足必死で、サラリーマンにはあまり耐えられるものではないでしょうね。

また、VIXが上がり過ぎてもうこれ以上は騰がらないだろうという水準になったら、レバレッジをかけて思いっきりショートするのもリターンが大きいのでアリだと思います。

なかなか取引機会がないでしょうが、米国VIを30とかで指値売り注文しておけばまぁ負けにくい(自動ロスカットレートをうまく調整しないといけないが)でしょうが、コンタンゴ狙いではなく、短期勝負をするというのもアリだと思います。

VIXの良いところは、値動きは激しいですが、落ち着けば一定の水準に回帰するところにあるので、うまく利用してご自身の戦略を立ててみてはいかがでしょうか。

私だったら、米国VI売り20%でのコンタンゴ狙い中期投資と、米国VIの水準に応じた逆張り的なロング・ショート投資の組み合わせでしょうか。
米国VIブル2倍ETFの新規売り規制がなければ、米国VIブル2倍ETFのショートと米国VIのロングで巧みにヘッジしながら稼ぐみたいな戦略もできたでしょうが、なかなか難しいですね。

それでは!

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