原油ETF/ETNは、証券会社の特定口座で原油投資ができ、他のETFや株との損益通算ができるのがメリットです。
今回はそんな原油ETF/ETNのタイミング投資戦略についてまとめます。

原油価格について前提知識

原油といえども指標となる原油(マーカー原油)は「WTI原油」、「北海ブレント原油」、「ドバイ原油」の3つがあります。
アメリカのWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)はニューヨーク・マーカンタイル取引所、イギリスの北海ブレント原油はICEフューチャーズ・ヨーロッパ、アラブ首長国連邦のドバイ原油は東京商品取引所でそれぞれ売買されています。

この3つのマーカー原油はほぼ値動きは連動しており、現在は北海ブレント原油>ドバイ原油>WTI原油の順で高値で取引されています。

原油の質としては不純物が少なくガソリンが多く含まれる軽質なWTI原油が最も良く、かつてはWTI原油が最高級品でしたが、シェール革命により北米地域のシェールオイル(軽質な原油とみなしてよい)の産出が溢れているため3つのマーカーの中では価格が一番低くなってます。

「高品質なWTI原油が安いなら北米から輸入すればいいから価格差は埋まるはずじゃん」って話ですが、原油はタンカー輸送費と保険料が大きくかかるので、地域格差は埋まらないのです。

ちなみに原油価格の話をするときは、最も取引が活発なWTI原油先物の期近物(限月が最もc近い)を指します。
50ドル/バレル(約159リットル)といった感じです。
日本国内だと、東京のドバイ原油価格を指すこともあります。
その時は、35,000円/キロリットルと円単位で話をすることが多いです。
※ドバイ原油の価格は東京商品取引所のページで確認できます。

原油と言えば、「原油産出はそろそろ限界であと何年で原油が枯渇する!」というピークオイル論(ハバート・ピーク理論)がありましたが、今は掘ろうと思えばどんどん増やせることが分かり、もう枯渇する心配はなくなってます
一方、「再生エネルギーの発展で原油需要が頭打ちになる!」という(逆)ピークオイル論も出てますが、こちらも新興国の発展で、圧倒的にガンガン石油製品を消費するようになるのでそれも杞憂とされてます。

原油の基礎知識は語りつくせないので、以下の参考サイトを紹介します↓

★石油連盟:「もっと知りたい!!石油のQ&A
知っておくととても面白い石油の基本情報です。イラストが多くてわかりやすいです。
初心者はまずこちらで原油の勉強をすると良いでしょう。

★東京商品取引所:「石油取引の基礎知識
原油先物用ですが東京の原油先物価格と連動するETNに投資する以上は読んでおくととても勉強になります。
ただ、内容はやや難しく読みづらいですので、最初は流し読みでこんなのがあるんだと思うだけで良いです。

 

投資対象となる原油ETF/ETNはこの3つ

さて、実際に原油投資するとなると、流動性が確保されており、投資対象として適格な原油ETF/ETNは以下の3つに絞られます。他にもありますが原油は価格変化が激しいので流動性の低いETF/ETNは避けた方が良いです。

銘柄コード 銘柄名 大カテゴリ 中カテゴリ 連動指標
1699 NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信 3_コモディティ 3.1_原油(WTI) NOMURA原油ロングインデックス
2038 NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN 3_コモディティ 3.1_原油(ドバイ) 日経・東商取原油レバレッジ指数
2039 NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ベア ETN 3_コモディティ 3.1_原油(ドバイ) 日経・東商取原油インバース指数

上記3つはいずれも野村証券グループのETF/ETNです。
上から原油価格に対しておおよそ、1倍、2倍、-1倍のレバレッジをかけて連動します。

連動指数は、一番上の1699は円換算したWTI原油先物をベースにした「NOMURA原油ロングインデックス」、他の2つは円換算したドバイ原油先物をベースにした「日経・東商取原油レバレッジ(インバース)指数」に連動します。

円換算したということは、「ドル建ての原油価格」と「ドル円」に投資することになります。
仮にWTIが10%上がっても、ドル円が5%下がれば、円換算の原油価格は4.5%の上昇に留まります。
基本的に原油の値動きの激しさに比べれば、ドル円はおとなしい方なので、過度に気にすることはないですが、「原油投資」だけでなく「ドル円投資」もしているということも忘れずに。

ちなみにドル円の影響を受けたくないのであれば、CFD取引という手があります。
こちらのDMM CFDだと純粋な「ドル建てのWTI原油」に投資できます。
とても魅力的ですが、ETF投資がメインの場合、ETFとCFDは損益通算できないデメリットがあります。

「株、ETF、ETN、REIT、投信、債券」の現物グループは特定口座内で損益通算でき、
「FX、CFD、先物、オプション」のデリバティブグループ内では確定申告で損益通算できるのですが、
この垣根を超えた損益通算はできないので、現物投資家には手が出にくいのです。
(上記の理由から、現物投資家が原油投資をしたいときに今回紹介するETF/ETNを使うのです)

各ETFの解説

以下では3つの原油ETF/ETNについて簡単に解説します。
信託報酬や分配金といった話は一切無視というか重要ではないので割愛します。

1699 NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信の解説

通称「野村原油」です。このETFは、WTI原油先物をベースにした「NOMURA原油ロングインデックス」という独自指標に連動します。

なぜ、WTI原油先物価格そのものでないかというと、WTI原油買いの先物ポジションは毎月期限が到来するため、毎月新しい限月のWTI原油先物に再投資(ロールオーバー)するためです。

ルールブックによると、「NY取引所の第 5 営業日以降のNY取引所の営業日の中で最初の東京営業日の翌日」から2日間かけてロールオーバーしてるみたいです。

コンタンゴによる原価に注意!

ロールオーバーする時に、期限が近い先物価格より期限が遠い先物価格が高い状態を、先物用語で「コンタンゴ」と言います。その逆を「バックワーデーション」と言います。

最近の原油先物は「コンタンゴ」状態で推移しているため、この「NOMURA原油ロングインデックス」は安く売って高く買うというロールオーバーをするため減価し、WTI原油価格よりもパフォーマンスは悪くなります。
その影響は、信託報酬なんて相手にならないくらい大きい(最近だと月に0.5-2%、原油価格が安いほど大きくなりやすい)のです。

詳しい説明は以下の野村証券の解説を読んでください。このETFを買うに当たっては絶対に読まないとダメです。

★野村証券:「NOMURA原油インデックスと原油先物価格の乖離について

ちなみにこの「コンタンゴ」と「バックワーデーション」は目論見書にも記載がないのです。
もっと投資家に大々的に開示すべきリスク(コスト)なのですが。

一応、公式ページもはっておきます↓
NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信の公式ページ

では具体的なコンタンゴ具合も見てみましょう。
以下の図は円換算したWTI原油価格と野村原油と、ついでにドバイ原油の指数である「日経・東商取原油指数」です。後者の2つはコンタンゴの影響でじりじり差が開いています。野村原油は1年半で34%ほどコンタンゴコストを払っているのではないでしょうか。
野村原油と日経・東商取原油指数に差が開いたのは、シェール増産でドバイよりもWTIの方が安くなったためと考えられます。

難しい話をしましたがまとめると、以下のとおりです。

  1. 野村原油は「WTI原油価格(ドル建て)」と「ドル円」に連動するよ!
  2. コンタンゴで減価することが多いから、長期投資にはそんなに向かないよ!

2038 NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETNの解説

通称「原油ブル」です。
この原油ブルは、東京商品取引所のドバイ原油価格の2倍の変動率で日々値動きします。
ドバイ原油が1%上がった日には、原油ブルは2%上がります。

厳密には、「日経・東商取原油指数」の2倍の値動きをする「日経・東商取原油レバレッジ指数」に連動します。
「日経・東商取原油指数」はコンタンゴ減価するため、長期投資には向きません。
さらにレバレッジ型ETFなので、レバレッジ減価もあるため、ますます長期投資には向きません。

また、ETNであるということも特徴の一つです。
ETNはETFと違って、実際に取引所で投資をして運用するわけではありません。発行体(野村)が連動指標の値動きで払うと約束した債券なのです。

実際に運用をしない分(発行体の勘定でリスクヘッジとしては行うでしょうが)、信託報酬が比較的安かったり、連動指標と実際の運用成績が乖離することがなかったり(取引所価格と基準価額は乖離する)しますが、発行体の信用リスクがあります。

他に注意点としては、日経レバの時と同様、レバレッジ型ですので長期投資には向かないことです。

NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル ETN公式ページ

取引所価格と基準価額との乖離に注意!

ちなみにこの銘柄は、2016年の前半には、基準価額に対して異常に高い価格で取引されたこともありましたので、投資の際には、東京証券取引所が公表しているインディカティブNAV(理論価格/取引時間中の基準価額みたいなもの)と現在値を比較しておくと良いでしょう。
http://www.tse.idmanagedsolutions.com/iopv/table?language=jp#

2039 NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ベア ETNの解説

通称「原油ベア」です。

この原油ベアは、東京商品取引所のドバイ原油価格の-1倍の変動率で日々値動きします。
ドバイ原油が1%上がった日には、原油ベアは1%下がります。

厳密には、「日経・東商取原油指数」の反対の値動きをする「日経・東商取原油インバース指数」に連動します。

注意点は原油ブルとほぼ同じですが、レバレッジが-1倍であるため、レバレッジによる減価はないですが、インバースによる減価はあります。

NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ベア ETNの公式ページ

3つのETFの減価具合を比較しよう

円換算WTIと3つのETFの1年半の値動きです。

野村原油は戦術の通り、コンタンゴコストでじりじり円換算WTIより減価しています。
原油ブルは2倍の値動きですので急落するともう元の水準には立ち直れない感じですね。
原油ベアは、そこまで激しくインバース減価していない印象です。
これは、原油ベアは、コンタンゴにより減価する「日経・東商取原油指数」と逆の動きをする「日経・東商取原油インバース指数」に連動するため、コンタンゴはプラスに働き、インバース減価を緩和しているのだと考えてます。

 

原油ETF/ETNの投資について

前述しました通り、原油ETF/ETNを長期投資するのはお勧めしません。
そもそも原油は消費するだけで、株と違って成長しませんので長期投資するものでもありません。
(インフレのヘッジになるという考えは捨て、インフレは株でヘッジすべきです)

そのため、タイミングを見て投資し、目標達成したらすぐに撤退するべきです。
ではどんなスタンスでタイミングを待つべきでしょうか。

産油国の意向に逆らわない

2014年から2016年にかけて、原油価格はそれまで100ドル/バレルで推移していたのが、30ドル割れまで急落しました。
これは、アメリカのシェールオイル革命に対抗して、中東諸国などが生産コストの高いシェールオイルを潰してシェアを維持するために大増産したためでした。

その後、財政が苦しくなったため、価格安定に方針転換をして下げ止まりました。
サウジアラビアでは今後、サウジアラムコという時価総額200兆円ともいわれる国営企業の株式公開を控え、原油価格安定に躍起になっています。

投資家は、合法的インサイダーを行う産油国の意向を十分に汲み取る必要があります。

産油国が価格上昇を模索しているときは買いかノーポジション、産油国が競ってシェア争いをしているときは売りかノーポジションといった感じです。逆をいくと大損失する危険性があります。

今現在は、OPEC諸国やOPEC非加盟国を含め、価格上昇に躍起になっていますので、逆らわない方が良いでしょう。

需給の転換点を意識する

原油は株と違って裏付け資産がなく、いついくらで原油を売るかという先物取引なので、需要と供給の関係が基本となります。
需要は景気に左右されますので、需要が急増したり、急減しそうなイベントがないかチェックします。
季節にも左右され、アメリカの5月末のメモリアルデーから夏にかけてのドライブシーズンはガソリン消費が多くなります。

一方、供給に関しては産油国の様々な思惑で増産凍結や協調減産があったり、パイプライン炎上など事故が原因で減ることもあります。また、原油価格が高くなるほど採算がとれる油田が増えるので産油量が多くなる傾向にあります。金利も採算に影響を与えるので金利が上がると油田への過剰投資を避けようと抑制する傾向が出てきます。

国際情勢の転換点を意識する

原油はテロの資金源になったりするので、経済制裁の対象になって輸出ができなくなったり、空爆などで油田を破壊されたりします。
かつて、中東で戦争が起こるときまって原油価格は高騰しました。
そのため、国際情勢の転換点を見極める必要があります。
軍事力を行使するアメリカもロシアも今はもう産油国なので、それが自国の経済メリットになることも留意すべきところでしょう。

テクニカルも見る

原油相場はネタがない時はテクニカルに動きます。
私は株などのテクニカル投資は信用してないですが、原油等の商品はテクニカル投資もありかなと考えています。

他の投資商品と比べて、特に原油はモメンタムが強い(一度上がると連続して上がりやすい。下がりだすと連続して下がりやすい)傾向に感じます。
そのため、株や為替で勝てないトレーダーも商品先物では勝てるといったような現象が起きたりします。
(まぁ、いろいろ試して自分に合った投資をするのが良いですよね)

まとめ

原油ETF/ETNは株と違って結構クセの強い投資対象ですが、現物投資家でも原油投資ができる手段として活用していきたいですね。

あくまでも投資するときは、過度なウェイトをかけずに勝負していきましょう。

また、原油ETF/ETNを買うときは、手数料を安くするテクニックも忘れずに。